ラク活──「死ぬ準備」ではなく「生きやすさ」をつくる片付け
(宇都宮市・地域包括支援センター職員研修 講演レポート)
第1部|研修レポート(概要と反応)
宇都宮市地域包括支援センター職員研修にて
宇都宮市内の地域包括支援センター職員を対象にした研修で、「ラク活(らくかつ)──シニア世代にやさしい暮らしの再設計」について講演しました。テーマは「終活ではなく、ラク活」。すなわち、死ぬための準備ではなく、生きやすくするための片付けです。
現場で役立つ視点が中心
内容は、動作(縦の動き)と生活動線(横の移動)の見直し、そしてアクション数(1つの行為を完了するまでの手順回数)を減らす方法が中心です。参加者からは、1階中心の生活配置や収納の高さ(上・中・下段)の使い分けなど、具体的で職場でも家庭でも使えるという声をいただきました。また、悪質な不用品回収・押し買い業者への注意喚起も、地域での周知に直結すると評価されました。
第2部|専門知識共有(講演内容)
1. ラク活とは何か
ラク活は、「死に向かう終活」ではなく、「これからを生きやすくする整理」です。目的は以下の通りです。
- 身体的負担の軽減:かがむ・持ち上げる・上げ下ろす動作を減らす。
- 転倒・事故の予防:生活動線を整え、段差や障害物を減らす。
- 精神的安心の確保:視覚的ノイズを抑え、落ち着ける空間をつくる。
- 自立の維持:自分で取り出せて、自分で戻せる配置を保つ。
要するに、ラク活は生きやすさをデザインする活動です。
2. 終活との違い
終活が「人生を締めくくるための整理」だとすれば、ラク活は「今日と明日をラクに生きるための設計」です。片付けを「未来の自分を守る行為」と捉え、日常の使い方に合わせて空間を再設計します。
3. 動作と動線の見直し
3-1. 動作(縦の動き)をラクにする
- 収納の高さを3層で管理:上段=軽くて滅多に使わない物/中段=毎日・週数回使う物/下段=重くて出番の少ない物。
- 最頻度の物は「目線〜腰」の中段へ:かがむ・背伸びの回数が減り、身体負担が大きく下がります。
3-2. 生活動線(横の移動)を短くする
- 使う場所の近くに道具を寄せる:キッチン消耗品は水回りの最短距離、外用工具は玄関付近、服薬関連は座ったまま届く位置へ。
- 1階中心の生活配置:寝起き・食事・入浴・洗濯の導線を1フロアで完結させ、階段移動を減らします。
4. アクション数を減らす
アクション数とは、1つの行為を完了するまでに必要な手順の回数です。例えば「コップを取る」だけでも、移動→扉を開ける→取り出す→戻る…と複数の手順が生じます。これを3〜4手順へ圧縮するだけで、毎日の負担が目に見えて軽くなります。
- 扉の回数を減らす:見える収納や浅い引き出しで「開ける」を省略。
- ワンモーションで届く配置:よく使う物は腰〜目線の範囲へ。
- 使う順に直列配置:左→右(手前→奥)で並べる。
- 用途の重複を統合:同用途の物は1カ所に集約して「探す」をゼロに。
5. 思い出の品との向き合い方
ラク活は「捨てる活動」ではありません。大事なのは選ぶことです。日用品と“思い出”を一度分け、デジタル保存・譲る/つなぐ・思い出ボックスなど、保ち方を選択します。見直しの時期(例:1年後)を決めておくと、無理なく前に進めます。
6. 悪質業者への注意喚起
不用品回収・押し買いなどの悪質業者に注意が必要です。所在地・電話番号が不明確なチラシ、「無料回収」「今だけ特別査定」などの甘言は要注意。行政認可の事業者や地域の信頼できる窓口に相談しましょう。家族で「いつも頼んでいるところがあります」という合言葉を決めておくと、断りやすくなります。
第3部|講師としての気づきとメッセージ
1. 「ラクに生きる」は手を抜くことではありません
ラク活の目的は、限られたエネルギーを「使いたい所に使える状態」にすることです。重い扉を減らし、遠い取り出しをなくし、取り出しにくい高さから解放する。これだけで、日々の行動の質が変わります。
2. 片付けは「心のリハビリ」
物の位置が決まると迷いが減り、行動が速くなります。小さな成功の積み重ねが自己効力感(自分でできる感覚)を取り戻し、暮らしの安定につながります。
3. まずは「一日一捨(いちにちいっしゃ)」から
完璧を目指す必要はありません。ラク活の基本は、少しずつ続けることです。毎日1つだけ、「もう使っていない」「なくても困らない」物を手放しましょう。それが一日一捨です。1週間で7個、1か月で30個、1年で365個。暮らしが軽くなり、心にも余白が生まれます。一気に片づけなくても、一日一捨からで十分です。
終わりに|ラク活は「生きやすさ」を取り戻す活動です
ラク活は、人生を締めくくるための片付けではありません。これからを快適に生きるための片付けです。動作と動線の見直し、アクション数の削減は今日から始められます。「取り出しやすさ=戻しやすさ」を合言葉に、暮らしの再設計を進めましょう。
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